最新のゲーム・本を追わない

これは最近になって気づいたことである。

忘れないように、というより、自分に言い聞かせるために文章にしておく。

たしか村上春樹の『ノルウェイの森』に、出版されてから長い時間がたった本しか読まない人物が出てきた気がする。長沢だっただろうか。10年だったか、20年だったかも曖昧なので、時間があるときに読み直して確認したい。

細かい記憶はともかく、最近、その姿勢は案外大切なのではないかと思うようになった。

30年間、何も読めなかったとしたら

例えば、今から刑務所に入ったとする。

アメリカの連邦刑務所のような厳重な場所で、ゲームはもちろん、本を読むこともできない。そして30年後、ようやく外へ出てくる。

そのとき、自分は何をするだろうか。

どんな本を読み、どんなゲームを遊ぶだろうか。

おそらく、出所した直後に発売されたばかりのゲームへ飛びつくことはない。

まずは、過去30年間に発売された膨大な本やゲームを調べるはずだ。

長い時間をかけて評価され続けた作品、何度も語られてきた作品、自分の好みに合いそうな作品を慎重に吟味する。そして、その中から本当に遊ぶ価値、読む価値がありそうなものを選ぶと思う。

考えてみれば、それは刑務所から出てきた人に限った話ではない。

私たちも、本来は同じように作品を選ぶべきなのではないだろうか。

作品は多いが、時間は増えない

現代には、消費しきれないほどのコンテンツがある。

毎週のように新しい本が出版され、新しいゲームが発売される。映画、ドラマ、漫画、動画まで含めれば、一生かけても触れられないほどの作品がすでに存在している。

これからも、その数は増え続ける。

一方で、私たちが持っている時間は増えない。

すべてを読むことも、すべてを遊ぶこともできない以上、どの作品に時間を使うかを選ばなければならない。

だからこそ、発売されたばかりの作品を反射的に追いかけるのではなく、少し時間を置いてから選んでもよいのだと思う。

数年待てば、その作品が一時的に話題になっただけなのか、長く評価される作品なのかも見えてくる。

不具合の多かったゲームは修正され、追加コンテンツを含んだ完全版が安く販売されるかもしれない。積み残していた本やゲームがあるのに、新作だけを急いで買う必要はない。

新しいというだけで、その作品の価値が高いわけではない。

発売日に遊ぶことには、別の価値もある

もちろん、発売されたばかりの作品を楽しむこと自体が悪いわけではない。

発売前の情報を追い、発売日に遊び、友人やインターネット上の人たちと感想を語り合う。その瞬間にしか味わえない楽しさもある。

結末を知らない人たちが、同じタイミングで作品を体験することにも価値がある。

ただ、その楽しさと、作品そのものの価値は分けて考えたほうがよい。

周囲が盛り上がっているから遊びたいのか。

本当に自分がその作品を遊びたいのか。

発売日に買わなければならないのか。

数年後でも楽しめるのか。

一度立ち止まって考えるだけで、かなりの時間とお金を節約できる気がする。

再読や再プレイの価値

もう一つ、再読や再プレイの価値は低く見積もられすぎていると思う。

現代では、たくさんの作品に触れることがよいことだと考えられがちだ。

読んだ本の冊数、遊んだゲームの本数、見た映画の数が、そのまま経験の豊かさであるかのように扱われることもある。

しかし、新しい作品を次々と消費することだけが、豊かな体験なのだろうか。

子どものころに好きだった本を、今の自分が読み直す。

昔夢中になったゲームを、何年かぶりに遊んでみる。

そのほうが、よく知らない新作を一本遊ぶよりも、満足度が高いことは十分にあり得る。

作品そのものは同じでも、受け取る側は変化している。

子どものころには気づかなかったことが分かったり、昔は共感できなかった登場人物の気持ちが理解できたりする。

昔は難しくて途中でやめたゲームを、今なら最後まで楽しめるかもしれない。

再読や再プレイは、まったく同じ体験の繰り返しではない。

過去の自分と現在の自分を比較する体験でもある。

新作を追わないという選択

これからは、本やゲームが発売されても、すぐには手を出さないようにしたい。

しばらく時間を置き、それでも読みたい、遊びたいと思った作品を選ぶ。

評価が定まるまで待つ。

すでに持っている作品を読み直す。

途中でやめたゲームをもう一度遊ぶ。

そうした時間の使い方を、もっと大切にしたい。

最新の作品を追い続けなければ、世の中から取り残されるような気がすることもある。

しかし、実際には、遊ばなかったゲームや読まなかった本のほとんどは、数年後には存在すら忘れている。

本当に価値のある作品なら、発売日に触れなくても逃げてはいかない。

むしろ時間がたっても残っている作品だからこそ、安心して自分の時間を預けられる。

というわけで、今後は最新のゲームや本を、反射的に追いかけないようにしようと思う。

とはいえ、『GTA VI』のようなものは、発売したらすぐ遊んでしまうかもしれない。

原則には、たいてい例外がある。